Story
何もないオーストラリアの荒野。たった一人で冷凍した豚の死体を運ぶ長距離トラック運転手クイッドは、ある日女性ヒッチ ハイカーを乗せた緑色のバンを目撃する。だがその後、その女性がバラバラ殺人の被害者として発見されたとき、犯人を確信した クイッドはバンの追跡を開始。孤独な車内で膨らませた妄想に駆りつかれ、幻覚を見るようになり、癖である独り言に拍車がか かった。そしてあろうことか、その行動によりクイッドは疑いの目を向けられるようになり、信じがたい状況に追い込まれていく――
何もないオーストラリアの荒野。たった一人で冷凍した豚の死体を運ぶ長距離トラック運転手クイッドは、ある日女性ヒッチ ハイカーを乗せた緑色のバンを目撃する。だがその後、その女性がバラバラ殺人の被害者として発見されたとき、犯人を確信した クイッドはバンの追跡を開始。孤独な車内で膨らませた妄想に駆りつかれ、幻覚を見るようになり、癖である独り言に拍車がか かった。そしてあろうことか、その行動によりクイッドは疑いの目を向けられるようになり、信じがたい状況に追い込まれていく――
サイキック・ホラー『パトリック』(78)でアボリアッツ・ファンタスティック映画祭グランプリに輝いたオーストラリアの鬼才リチャード・ フランクリン監督が、敬愛するアルフレッド・ヒッチコック監督の名作『裏窓』(54)にオマージュを捧げたサスペンス・ロードムービー。 『荒野の千鳥足』(71)、『美しき冒険旅行』(71)、『ピクニックatハンギング・ロック』(75)、『マッドマックス』シリーズまで、個性あふ れるオーストラリア映画の中でも一際フランクリン監督の独特なセンスが光る作品として、海外で圧倒的存在感を獲得。 クエンティン・タランティーノはフェイバリットに挙げてその緻密な脚本を絶賛。『裏窓』とスティーヴン・スピルバーグの『激突!』(71) を融合させた心理戦、孤立無援の恐怖、執拗な追跡、そして緩く徐々に張り詰める緊張感でヒッチコックの亜流とは言わせない 唯一無二のサスペンス映画と評価され、さらには『激突!』『コンボイ』(78)と並ぶトラック・アクションとしても知られる一作だ。
野犬ディンゴをお供に、ぶつぶつと独り言をつぶやく空想癖のあるトラック運転手クイッドを演じるのは『ドク・ホリディ』(71)、 『ゴングなき戦い』(72)、『センチュリアン』(72)、『ロング・ライダーズ』(80)など多くの傑作で活躍した名優ステイシー・キーチ。 クイッドのトラックに乗り込む不思議なヒッチハイカー、ヒッチ役には当時『ハロウィン』(78)、『ザ・フォッグ』(80)『プロムナイト』 (80)などのホラー映画で〈絶叫の女王〉として確固たる地位を築いていたジェイミー・リー・カーティス。その装は『マッドマックス』 (79)、『マッドマックス2』(81)を手がけたブライアン・メイが担当している。フランクリン監督は本作で認められヒッチコックの 名作の続編、ハリウッド映画『サイコ2』(83)の監督に抜擢。以後『ビデオゲームを探せ!』(84)、『リンク』(86)などを発表。 サスペンスの名手として羽ばたいた。すべてのトラック好き、ヒッチコック好き、サスペンス好き、豚好きと孤独者に捧ぐ、映画史上初で最後の《寡黙系独り言ポーク・サスペンス・ロードムービー》が遂に日本のスクリーンに登場する。
野犬ディンゴをお供に、ぶつぶつと独り言をつぶやく空想癖のあるトラック運転手クイッドを演じるのはステイシー・キーチ。1941年6月2日、ジョージア州生まれ。父親は俳優のステイシー・キーチ・Sr、弟のジェームズ・キーチは、俳優・映画監督。カリフォルニア大学とイェール大学で演劇を、更にロンドンのLondon Academy of Music and Dramatic Artで学ぶ。帰国後、ブロードウェイやオフ・ブロードウェイで活躍し、オビー賞などを受賞。映画デビューは1968年『愛すれど心さびしく』(原題:The Heart Is a Lonely Hunter)。
以後TVシリーズ『探偵マイク・ハマー』で主演を務めたほか、『ドク・ホリディ』(71)、『ゴングなき戦い』(72)、『センチュリアン』(72)、『ロング・ライダーズ』(80)など多くの傑作で活躍した名優。
クイッドのトラックに乗り込む不思議なヒッチハイカー、パメラ役には当時『ハロウィン』(78)、『ザ・フォッグ』(80)、『プロムナイト』(80)などのホラー映画で<絶叫の女王>として確固たる地位を築いていたジェイミー・リー・カーティス。1958年11月22日生まれ、カリフォルニア州ロサンゼルス出身。父は俳優のトニー・カーティス、母は女優のジャネット・リー。1977年、テレビ映画『刑事コロンボ』のウェイトレス役でデビュー。その後はホラー映画に立て続けに出演し、<絶叫の女王>という異名を取る。1983年、ダン・エイクロイドとエディ・マーフィと共演したコメディ映画『大逆転』で英国アカデミー賞 助演女優賞を受賞。1994年のアーノルド・シュワルツェネッガーと共演した『トゥルーライズ』では、ゴールデングローブ賞 主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』で第95回アカデミー賞助演女優賞受賞。その他、『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(88)、『ブルースチール』(90)、『マイ・ガール』(91)、『フォーチュン・クッキー』(03)、『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(19)、『ホーンテッドマンション』(23)、『シャッフル・フライデー』(25)等、数多くの作品で活躍する名優。
オーストラリアに生息するタイリクオオカミの亜種
1948年7月15日、オーストラリア、メルボルン生まれ。10歳で8mm映画の制作を開始。1960年代にバンド、ザ・ピンク・フィンクスのドラマーとして活動したが商業的成功とは無縁だった。テレビ広告会社のアシスタントカメラマンとして働き1967年、南カリフォルニア大学に入学、ジョージ・ルーカス、ロバート・ゼメキス、ジョン・カーペンターといった著名な映画監督たちとともに映画を学んだ。フランクリンは12歳で『サイコ』(1960)を観て以来のアルフレッド・ヒッチコックの熱狂的なファンであり、大学でヒッチコックの『ロープ』(1948)の上映会を企画、ヒッチコックに登壇を依頼したところから親しくなり、『トパーズ』(1969)の撮影現場に招待されるなど交流を深めた。ヒッチコックの遺作となった『ヒッチコックのファミリー・プロット』(1976)の現場も訪れている。1970年代にオーストラリアに帰還。警察ドラマ「Homicide」の4つエピソードを監督した後、1975年にセックスコメディ映画『The True Story of Eskimo Nell』で監督デビュー、1976年にはソフトコアポルノ映画『Fantasm』を監督、1978年にカルト作となっているホラー映画、エヴェレット・デ・ロッシュ脚本による『パトリック』を監督。アヴォリアッツ・ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞のほか、国際的なヒットとなる。その際、デ・ロッシュにアルフレッド・ヒッチコック監督の『裏窓』(1954)の脚本のコピーを渡したが、デ・ロッシュは『裏窓』のプロットを移動中の車両で展開する映画にすることを提案した。その結果、デ・ロッシュの脚本をフランクリンが監督した『ロードゲーム』(1981)が生まれた。主演ジェイミー・リー・カーティスはフランクリンが大学の友人であるジョン・カーペンターの『ザ・フォッグ』(1980)の撮影を訪ねた際に知り合っていた。『ロードゲーム』は1981年当時、オーストラリア映画史上最大の製作費をかけた映画で、オーストラリア以外のインターナショナル配給を手掛けたAvco Embassy Picturesによってホラー映画的な売り方をされた結果、北米では大コケとなった。のちにフランクリンはその売り方はジェイミー・リー・カーティスが出演していたからだろうと振り返っている。だが多くからその完成度を絶賛された『ロードゲーム』で認められたフランクリンは、Avco Embassyの重役を通じてハリウッドに移り、ヒッチコックの傑作『サイコ』の続編となる『サイコ2』(1983)の監督に抜擢され大ヒットとなった。1984年には『窓』(1949)のリメイクであり、コーネル・ウールリッチの1947年の短編小説「The Boy Who Cried Murder」を原作とするスパイ・アドベンチャー映画『ビデオゲームを探せ!』を監督。ちなみにヒッチコックは同じくウールリッチの1942年作「It Had to Be Murder」を原作に『裏窓』を発表、『ロードゲーム』の元がその『裏窓』である。1986年には脚本家のエヴェレット・デ・ロッシュとの再タッグとなった『リンク』を監督。フランクリン最後のハリウッド作品は1991年の『F/X2 イリュージョンの逆転』。ハリウッドに嫌気がさしたフランクリンは母国に戻り『Hotel Sorrento』(1995)、『Brilliant Lies』(1996)を監督、B級ジャンル映画監督のレッテルを貼られていた状況を覆し、アートハウス系作品もこなせることを自ら証明するべく取り組んだ意欲作だった。最後の作品は2003年の海洋スリラー『ゴーストアビス』。2007年、自伝を執筆中の最中、前立腺癌により死去。
1934年7月28日、オーストラリア、アデレード生まれ。(1997年4月25日没)アデレード・エルダー音楽院でピアニスト、ヴァイオリニスト、指揮者として学び、オーストラリア映画史における最高の映画音楽作曲家の一人として高く評価されている。1957年、ABCアデレードに入団し、「ABCアデレード・ビッグバンド」を結成・指揮。35歳でメルボルンに移り、ABCのメルボルン・ショー・バンドの指揮者兼アレンジャーに就任。映画界に進出する前はテレビ番組のテーマ曲を作曲してキャリアをスタート。特にドラマシリーズ「ラッシュ」の音楽は彼の音楽的功績の中でも最高傑作の一つとされている。また映画音楽家としては30本以上の作品を手掛け、担当作は『マッドマックス』(79)、『マッドマックス2』(81)を手掛けたことが最も知られているが、このほか『誓い』(81)、『エルム街の悪夢 ザ・ファイナルナイトメア』(91)、『Dr.ギグルス』(92)などがある。『マッドマックス』でオーストラリア映画協会賞を受賞、また『ロードゲーム』『マッドマックス2』『フロッグ・ドリーミング』ではオーストラリア映画協会賞の最優秀音楽賞にノミネート。リチャード・フランクリン監督とは『The True Story of Eskimo Nell』(75)、『パトリック』(78)、『ロードゲーム』(81)、『クローク&ダガー』(84)の4作品で音楽を担当。1997年4月25日、心臓発作のため62歳で亡くなった。
クイーンのギタリスト「ブライアン・メイ」とは別人。
アメリカ生まれですが、エヴェレット・デ・ローチ(『パトリック』『レイザーバック』)はオーストラリア映画脚本家の中で最高の人物だと思います。彼は本当に素晴らしい脚本をいくつか書いていて、中でも『ロードゲーム』は間違いなく彼の最高傑作だと思います。明日リメイクしても問題ないくらい素晴らしい脚本です。あの脚本は本当に素晴らしいので、変更したり、誰かに書き直させたりせず、そのまま使って、ラッセル・クロウをクイッド役に起用すればいいんです。それから、私はリチャード・フランクリンの大ファンで、彼のヒッチコック的才能の真骨頂はまさにこれだと思います。本当に素晴らしい映画です。
本作はB級映画の基本的なフォーミュラを巧みに扱い、他のライバルを圧倒している。偽物でもなければ、馬鹿げた作品でもない。
確かなプロットと演出でサスペンスを盛り上げ、主演スターのカリスマ的な演技でユーモアも生み出すオーストラリアのスリラー。
好奇心を掻き立てるスタイリッシュなスリラー。特にステイシー・キーチ演じる主人公が暇つぶしのために乗客と行う言葉遊びにおいて、その人物のパラノイア描写が高まっていく。10点満点中10点。
型破りで、ほとんどめまいがするほどの感性を備えた、究極的に素晴らしいスリラー。
主人公クイッドがクィアの男性だと推測するのは…無理があるだろう。しかし、明らかに暗示されているのは…クイッドが、この男性連続殺人犯を追跡し逮捕するという、ある種の「チンコ振り回しコンテスト」のような考えに執着しているということだ!
あまり知られていないヒッチコックの影響を受けたこのスリラー映画はまさに『裏窓』のロード版だ。
この映画が、不安に満ちた70年代のロードムービーとヒッチコック風のスリラーを組み合わせた、驚くほど心地よい作品となっているのは、まさにその気取りのせいだ。
恐怖と生意気なタランティーノ風のセリフを組み合わせたこのヒッチコック的アウトバックスリラーは、その脅威を全く失っていない。
オーストラリア映画の中でも優れた作品の一つであり、『激突!』や『悪魔の追跡』といった他の有名な追跡映画とスタイルやテーマの類似点がある。